日本一周サーフトリップ16日目|親子グマとの遭遇、襟裳岬の絶景

波乗り紀行

2024年8月1日。北海道に入って16日目。

少し遅めに起き、前日にコンビニで買っておいた朝食を済ませた。今日も太平洋沿いを走りながら、まだ見ぬ波を探していく。

道東エリアだけに期待は高い。そんな気持ちで車を走らせていると、最初のポイントへ向かう途中で思いがけない出来事が起きた。

道路の前方に、大きな黒い影が見えた。目を凝らすと、親子と思われる2頭のクマだった。距離は100メートル以上あったが、それでも体の大きさははっきり分かる。ニュースで見ていたヒグマの話が、一瞬で自分の目の前の現実になった。

安全な場所に車を止めて現在地を確認した。

見える範囲に民家はなく、周囲にあるのは畑と牧場だけ。それでも人がまったく立ち入らない場所ではない。念のため警察へ通報した。

この目撃情報は、その後、地元のローカル紙でもニュースになった。北海道の自然の中を旅していることを、朝から強烈に実感させられた。

しばらく気持ちを落ち着かせてから、最初のポイントへ向かった。

たどり着いたのは河口のサーフポイント。海には十分な波があり、普通にサーフィンできそうに見える。それなのにサーファーは一人もいなかった。

まだこの日最初のチェックだったため、ここは入らずに先へ進むことにした。本州なら人が集まりそうな波が、北海道では誰にも乗られないまま割れている。あらためて、ここには波が余るほどあるのだと思った。

ここからは海岸線に沿って、通称「黄金道路」を走る。黄金が採れる道という意味ではない。黄金を敷き詰められるほど莫大な建設費がかかったことが、その名前の由来らしい。

この日は雲が多かったが、晴れていれば海を眺めながら走る最高のドライブルートだろう。

しばらく進むと、路肩に車が数台止まっていた。海をのぞくとサーファーの姿がある。ぱっと見でいい感じに波は割れていたので、迷わず入ることにした。

入水前に恒例の水温チェック。表示は17.4℃だった。前日よりわずかに高いものの、8月とは思えない冷たさだ。周りのサーファーはほぼ全員がフルスーツ。僕はシーガルのウェットスーツを選び、海へ入った。

波はコシからハラ、時折入るセットで胸前後。波数は少なめで、全体的にはゆったりしたコンディションだった。混雑もなく、自分のペースで波を待てる。途中から冷たさにも慣れ、気づけば3時間ほど海に入っていた。北海道の広い海で、たっぷり波に乗れた。

海から上がった後は、近くにできたばかりのような雰囲気のカフェへ。冷えた体にカレーがよく合い、スムージーまで一気に飲み干した。

この町には、サーフィンを目的に移住する人が増えているらしい。海の近くに小洒落た店ができるのも、そうした新しい住民の存在と関係しているのかもしれない。

波だけでなく、海を中心に町の空気が少しずつ変わっていく。旅先でそんな気配を感じられるのも面白い。

ランチの後は、再びポイント巡りへ。次に見た小さな河口は、インサイド寄りで一気に崩れるダンパー気味の波だった。地形を見ても、この日はあまり期待できそうにない。

続いて立ち寄ったのは漁港脇のポイント。中央には小さな川が流れ込み、地形は悪くなさそうだった。この日はほぼフラットだったが、先ほど入ったポイントが大きくなり過ぎた時には候補になりそうだ。こうした気づきは、本やネットの情報だけでは分からない。実際に海岸線を走って初めて見えてくる。

えりも町の手前までやって来た。ストリートビューで波が割れているのを見つけ、気になっていた場所にも立ち寄った。この日も波はあったが、形はいまひとつ。可能性は感じるので、ここも次回への宿題として残した。

さらに車を進めて、えりも町へ入る。ここからは日高地方だ。まずは漁港脇にある、このエリアでは比較的知られたポイントを確認したが、残念ながらフラット。波が入れば、ショートボード向きの掘れたブレイクになるらしい。

次の小さな河口は、海底に玉石が広がっていた。ここもストリートビューではいい波が割れていた場所だが、この日は条件が合わない。さらに先の広いビーチでは、小さいながらも海岸のあちこちで波が崩れていた。ピークはいくつもありそうなのに、サーファーは誰もいない。北海道には、混雑とは無縁の海がまだまだ多く残っている。

次のポイントへ向かう前に、一度訪れてみたかった襟裳岬へ寄り道した。岬に立つと、海へ向かって伸びる大地と、その先に広がる水平線が一度に目へ飛び込んでくる。

とにかく絶景だった。風景を眺めているだけで、体の中へ新しい力が入ってくるような感覚がある。昔の少年漫画風に言えば、小宇宙(コスモ)を感じる場所だ。北海道の大自然を、全身で受け止められる。

岬の周辺にはアザラシが暮らしていて、一年を通して観察できるらしい。残念ながら、この日は姿を見つけられなかった。それでも、波と風がつくった岬の景色だけで、立ち寄った価値は十分にあった。

この日最後に訪れたのは、小さな河口がある漁港脇のポイント。夕暮れの海には穏やかな波が打ち寄せ、空は少しずつ赤く染まっていった。朝のクマとの遭遇や、冷たい海で過ごした3時間を思い返しながら波音を聞いていると、気持ちが静かに整っていく。

通りかかった漁師のおっちゃんに聞くと、台風の時にはここでもサーファーを見かけるという。海が静かな日だけ見ていたら分からない情報だ。ここも、また波のある日に訪れたい場所の一つになった。

晩ごはんは、えりも町の大衆食堂であんかけ焼きそば。シンプルで、どこか懐かしい味がした。その後は山荘の温泉で、長い移動とサーフィンの疲れをゆっくり落とした。

苫小牧から始まった北海道一周の旅も、そろそろゴールが見えてきた。

これまで通ってきた海岸線や、そこで出会った人たちを思い出す。野生のクマに驚き、黄金道路で波に乗り、襟裳岬の大自然に圧倒された北海道16日目。

旅の余韻に包まれながら、ゆっくり眠りに落ちていった。

To be continued…

Photo Gallery

ヒグマの目撃談がちょっとしたニュースになるのが北海道。
晴れていれば最高のドライブになりそうなシーサイドライン。開拓者たちの苦労に想いを馳せる。
海上がりのランチは旅の楽しみ。田舎町のオシャレカフェにて。
一見よさそうに見えるリバーマウスのポイント。この日はインサイドのダンパー。
日高地方だけでもこんなに広い。和歌山県や福岡県とほぼ同じ面積とか。
無人のブレイクが数多く点在する、北海道・道東の海岸線。人が少なすぎて寂しいくらいだ。
数キロにわたる広大なビーチに無数のピークが点在している。波取り合戦とは無縁だ。
えりも町に入ってから晴れてきた。西向きの海から見るサンセットはやはり格別だ。
1日の締めくくりはやはり温泉。今度は宿泊もしてみたい。

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